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3.整備前出力測定 & タイミングベルト交換 Alfaromeo156完全リファイン計画

シャシーダイナモで整備前出力をチェック

今回の完全リファイン計画で、156が整備前後でどう変化するのかを知るために、整備前の状態でパワーチェックを実施。出力特性はグラフで描かれて専用の出力用紙にプリントアウトされるため、視覚的に非常に分かりやすい。この出力用紙を、整備後にもう一度セットし、整備前後のグラフを重ね合わせて確認していく。

まずはスチーム洗浄作業から

分厚い埃の積もったエンジンルームにスチーム洗浄を実施。特に目立つシリンダーヘッドカバーは、いわばアルファ156のドレスアップパーツの一種。取り外して汚れを念入りに落としてピカピカに。
次はホイールを外して下回りもスチーム洗浄を実施。ホイールアーチ内側の汚れも専用洗剤で徹底的に清掃。ちなみに、ブレーキダストのこびりついた156純正ホイールを取り外すと、ホイールとの接触面が非常に汚れていることが分かる。新しいホイールを装着する前に、この接触面をできるだけ綺麗にしておき、面を均一にしておく必要がある。またブレーキパッドはSESSAブランドのローダストタイプを使用する予定。ホイールが黒く汚れにくく、価格も比較的手頃ということもあり人気の商品だ。

交換パーツを並べてみた

車両状態チェックで指摘された部分を新品パーツに置き換えていく。その一覧はご覧のとおり(いわゆる定期消耗部品を除く)。サスペンションダンパーやアーム類、ブレーキローター、クラッチプレート、等々。ここに並べられた以外のパーツについても、作業の過程で問題ありと判断された部位についても随時新品パーツへと交換していく予定だ。
また、タイヤは2014年5月にリリースされたコンチネンタル・プレミアムコンタクト5を予定。サイズは205/55R16となる。

タイミングベルト交換

アルファ156の場合、タイミングベルトは4~6万キロでの交換が目安と言われている。走行10万キロを超えている現車のタイミングベルトも、おそらく一度交換されていると思われるが、ベルト表面はひび割れ、一刻も早く交換すべきと言っていい状態だった。また、タイミングベルトの張りを一定に保つタイミングベルトテンショナーの劣化も深刻だ。

タイミングベルトの分解前に考えなければならないのは、現車における現状のバルブタイミングが果たして正常か?ということだ。「いま現在のタイミングに習って組む」のではなく、「最適なタイミングで組む」べきであることは言うまでもない。現に2回目以降のタイミングベルト交換を行う場合、前回の作業時に適正ではない組み付けを行ってしまっているケースが稀にある。ベルトカバーを開け、それぞれのプーリに「合いマーク」がマーキングされている車両の場合、レッドポイントでは「過去にタイミングベルトを分解した車両」と見なし、特に注意して作業を行っているそうだ。

タイミングベルト交換を行う場合、ほとんどの欧州車には「SST(専用ツール)」が用意されている。SSTを使うことで、メーカーの定めるバルブタイミングに正しく位置合わせを行うことができる。仮にSSTがない場合、分度器などを用いて機械的にタイミングを検出する、といった一手間が必要になる場合もある。
ベルト駆動式・DOHCエンジンの搭載されたアルファロメオの場合、「カムロックツール」と呼ばれるSSTを用いる。作業のたびにカムシャフトカバーを取り外すのは少々手間だが、マシニングセンターで正確に削り出されたSSTを使うことで、カムシャフトを正確かつ確実に固定できるようになる。

今回、ベルトの分解前にカムロックツールをセットしてみたところ、エキゾースト側カムシャフトのズレが発見された。これを受け、単純なタイミングベルトの交換だけでなく、カムシャフトを適正な位置で組むという、さらに一歩踏み込んだ作業を実施している。現車のエンジンの調子は、これまで以上に確実に良い方向へと進歩しているはずだ。

タイミングベルト交換に限らず、作業の過程で確認できることを見逃さない。そして誰も気づかなかった不具合を見つけ出し、修正する。まさにそれが、メカニック冥利に尽きる瞬間なのだという。

タイミングバリエーター、クランクプーリー交換

回転数に応じてカムを進角させてモア・パワーを発揮させるタイミングバリエーターは、この時代のアルファロメオなどの他、フェラーリなどにも使われている。こうした部品の劣化は進角ズレ(レスポンス悪化)に直結するため、新品に交換する。
ゴムブッシュが挟み込まれた純正クランクプーリーはレッドポイントオリジナルとなるアルミ製に交換。ゴムの劣化による位相ズレが解消される他、軽量化と、それに伴うレスポンスアップも期待できる。

自動車整備の「作業費用」について

自動車整備の“作業費用”を考えた時、例えばいくつかの関連作業をまとめて実施することで、整備作業費用を安く抑えることができる。逆に言うと、ひとつひとつの整備作業をバラバラに実施すると作業費は割高になっていく。考えてみれば当たり前の話なのだが、自動車整備を「実施する側」と「お願いする側」の間でのギャップにつながっているケースも多いように思う。
また、顧客の中には、無理を承知で「急ぎの作業でやって欲しい」といった要望を出すこともある。レッドポイントに限った話ではないが、こうした場合の整備工賃はなかなか明示しにくく、対応に苦慮するケースもあるのだという。
結局のところ、作業する側とお願いする側の意識のギャップを極力避けるためには、作業内容に関して、事前にできるだけ詳しく打ち合わせることがとても重要になってくる。また、整備作業の過程で予期せぬ不具合を発見した時、メカニックがその場で対応できる程度の裁量があればベストと言えるだろう(もちろん作業費用や部品代にもよるが)。

純正パーツと社外パーツを使い分ける

レッドポイントの場合、純正パーツと社外パーツを最適に組み合わせて利用している。「なにが何でも純正」ではなく「社外品を使ってとことん安く」でもない。あくまでも選択基準は「製品クオリティ」であり、パーツや部位によって使い分けている。ちなみに今回の156のフロントスイングアーム類は純正品を使用。その理由は「丈夫で長持ちするだけでなく、適正なアライメント数値を保持する上で絶対必要」だから。長年に渡って蓄積されてきた経験から導き出される最適解なのである。
また、ステアリング廻りは、通常であればステアリングラック、タイロッド、タイロッドエンド、ブーツ等を一式でアッセンブリー交換となるが、今回の156リファイン計画では社外パーツを利用。劣化した部位ごとにパーツを新品に交換し、結果的に安価で、しかもほぼ完全なリフレッシュを果たしている。