147 1.6 Personale リフレッシュ作業
アルファロメオ147の1.6T/Sに Personale(ペルソナーレ)という特別仕様車があった事をご存知でしょうか。
この企画は、新車当時にさかのぼった話をするとレッドポイントとアルファロメオ岐阜の共同企画にて
生み出されたプロジェクトカーなのです。
岐阜限定の特別仕様車という事になります。
当時のディーラー記事もありました。
この特別仕様車の中で最も光る点は、専用セッティングのサスペンションをビルシュタインをベースに
開発した事と言っても過言ではありません。
そのままでは硬い印象を受けるビルシュタインを、その持ち味を無駄にする事無く、マイルドな味付けに
セッティング変更を行い、新車状態で組み付けを行っていました。
組み合わせるスプリングはH&R製を用いて、丁度良いローダウンでありながら快適な走破性がウリの
専用サスペンションです。
OZのスーパーツリズモGTが標準で備わるなど、妥協の無いコンプリートカーですね。
極め付けに、1.6には備わらないエンジンのアンダーカバーも当社オリジナルを装着するといった
通好みな1台です。
その当時の企画商品達が10年以上経過した今でも、定番アイテムである事は自分達も嬉しい点です。
アンダーカバー・ツーリズモGT・オリジナルセッティングサスペンションどれも現役ですからね。
さて、今回ご紹介するのは、147ペルソナーレを新車当時に購入された方の車輌整備です。
ワンオーナーで永く乗られ、10万キロを越えた辺りで2年程自宅車庫に保管し、冬眠から目を覚ます
整備のご依頼を頂きました。
まずは車を引き取りに伺うところから始まるわけですが、雨には当たらずとも2年の歳月で積もる埃はなかなか分厚いです。
エンジンは始動しなかった為、車庫からお客様と車を押し出し、積載車に積み込みます。
各部の状態点検から始まるわけですが、今回の状態点検は普段の点検方法とは少し異なってきます。
整備が必要・修理が必要な箇所に加えて、2年の不動期間という事も考慮してチェックを行う必要があります。
定期的に動いている車よりも、不動期間の永い環境の方が車は密かな傷み・劣化を進行するものですから。
今回の作業内容はあらゆる箇所への整備を施します。
車検整備一式
ステージ1メンテナンス一式
ステージ3メンテナンス一式
タイミングベルト廻り一式
クラッチ交換一式
シフトコントロールケーブル及びレバー廻り一式
サスペンション系統不具合箇所改善一式
ブレーキ系統予防的整備及び不具合箇所改善一式
その他進行状況に合わせた補修・改善内容施工
内容が多いため、全ての作業をご紹介というわけにもいかない為、抜粋してお届けしたいと思います。
ステージ3メンテナンスや、タイミングベルト関連作業が順調に進行し、続いてはクラッチ系統の
作業が始まっています。
クラッチカバー・ディスクの交換前・交換後の画像です。
カバー中央部にダイヤフラスプリングが盛り上がって見える方が交換前です。
中央部に何も見えない方が交換後です。
これが、クラッチペダルを操作するのに必要な踏力に直結する結果ともいえます。
毎日乗っていると、愛車の発する変化に気付き難いものですが、同一車種での良否を熟知した目線では
その車がどういった状況にあるのかがすぐに判別可能です。
今回の147の場合、車に乗り込みクラチペダルを踏んだ瞬間に「ペダルが重い=クラッチの減り」と予測が
つきました。
クラッチディスクの消耗に合わせて、上記画像のカバー・ダイヤフラムが立ち上がってきます。
そうすると、おのずとペダル踏力が増えてしまいます。
クラッチ消耗に関する記事は過去に幾度と書いていますが、ムルティプラの整備記事の際が分かり易いですかね。
クラッチオーバーホールの際は、足回りも同時分解しますので同時に施工可能な消耗品は交換をお薦めしています。
今回も例に漏れず、お約束的なロワアーム・アッパーアームを交換します。
ショックアブソーバは、非常に状態が良かった為今回はそのまま再使用します。
ショックアブソーバの判断基準は、SDLテストの他には手段が思いつかない程的確な結果が得られます。
今回も、作業前の車輌点検時にSDLテストを行っていますので、ショックアブソーバの作業が必要かどうかは
事前に明確になっています。
この事前に判別が出来ているということが実はすごく大切なのです。
今回の場合は特にSDLの恩恵を大きく受けています。
なぜなら、整備開始前の車検が無く、ナンバーも無い、2年不動なので最低限の整備を行わなければ路上テストも
不可能。
試運転を行い、感覚的にどうなのか?を判断できない状況で有る場合、テスタの力は本当に偉大です。
全ての作業が終わり、試運転を行い、「あ..ショックアブソーバだめでした」ではお客様にご迷惑をおかけする事になります。
SDLによるチェックでは、以下の様な結果を確認しています。
前後ともに路面粘着率が高く、乗り心地の良さそうなグラフです。
逆にショックアブソーバが交換時期を迎えている場合のグラフもご覧下さい・。
ダンパーの良否判定基準になる路面粘着率の低下が著しく現れています。
この様な結果の場合は、作業着手前にお客様と打ち合わせを行い、同時施工にするかどうか、お話をします。
今回の147に装着しているビルシュタイン製ダンパーです。
ダンパー本体には「ALFA147 1.6L FRONT TYPE REDPOINT ORIGINAL」と明記されています。
そこに組み合わされるスプリングはH&Rです。
新品のBILSTEINをベースに、いきなり仕様変更を行い組み付けるという贅沢な手法です。
別の言い方をすれば、オーバーホール時期を向かえたダンパーはリクエストに沿って仕様変更を行う事が可能です。
メーカーの味付けでは無く、「こうしたい!」というイメージが形になりますのでおすすめです。
以前に、フィアット500で仕様変更を行いガラリと印象の違う乗り味を再現しています。
操作性の非常に悪くなっていた、シフトコントロールケーブルです。
前後ストロークが非常に重く、軽快と言うには程遠い操作感でした。
不思議なもので、シフトレバー・アクセルペダル・クラッチペダル この3つの操作系の動きがスムーズで軽いと
車の動きも軽快に感じてきます。
車を楽しく走らせるうえで大切な要素です。
シフトレバー台座ごと取り外し、組み替えを行います。
安価な作業ではありませんが、リフレッシュの際には重要なポイントです。
厄介な構造の為、大掛かりな分解が必要です。
ごっそりと外し、組み替えます。
未施工車輌には必ずご案内しているまずはここからと言うにふさわしい ステージ1メンテナンスはもちろん施工です。
いつ見てもこのターミナルの効率の悪さは気になります。
内側の接触面積があまりに細すぎます。
バッテリポスト側にしっかりと接触させなくては、どれだけアースを追加しようが、電圧を上げようが無駄です。
当社の用いるターミナルであれば現存する既製品の中では最高レベルに接触面積を確保できます。
ノーマル比倍以上ですので、通電性が向上しないわけがありません。
ただし、このターミナルをアルファ系のバッテリに装着するには工夫も必要です。
ご覧の様に、確実かつ効率良く装着しています。
マイナスアース側もしっかりと。
赤色に見えるのは、バッテリ・ターミナル・グリスを塗布するからです。
酸化防止に貢献します。
各部が仕上がってきました。
部品の洗浄・下回りの洗浄などを行いながら進行する為、10万キロを越える車とは思えぬ下周りになっています。
外観の綺麗も大切ですが、下回りの綺麗さも大切です。
年に一度はしっかりと洗浄しましょう。
作業前から気なっていた事があります。
エンジン始動と同時にどこからか「カチカチ」と鳴いています。
バルブ廻りかな?と思いきや原因はこちらでした。
エキゾーストマニホールド本体継ぎ目からの排気漏れです。
ポート側から溶接を見てみると。
真っ黒だと分かりづらいので、掃除しました。
すると、溶接痕のそばに一周に渡る筋があります。クラックですね。
なんと、4箇所のうち、3箇所がそういう状態でした。
こういう不具合は、部品交換では無く溶接修理で対応します。
修理後は、排気漏れの耳障りな音が消え、スムーズさが増したようなフィーリングに変わります。
仕上には4輪トータルアライメントを行い、しっかりと仕上ます。
ブッシュのストレス抜きも合わせて行い、ブッシュの適正位置をリセットします。
そうすることで、より良い足の動き・正しい足の動きを実現します。
ペルソナーレ147の場合、新車時に当社で足回りの組み替え・アライメントを行っていますので
ブッシュのストレス抜きが新車時に完了しています。
反面、ほとんどの吊るし状態の新車はストレスを抱えた状態なわけです。
これを行うかどうかで、ブッシュの耐久性にまで大きく響きますので必ず行いたい作業です。
作業も完了し、車の状態は非常に良くなりました。
ですが、車を動かす度に気なってしまうのが、最近の車に多い「内装ベタベタ」です。
アルファの場合、誰もが経験しているであろう パワーウィンドスイッチのベタベタは非常に悪質です。
手が触れると、指先に黒いベタベタが付着する為不快です。
見るからにベタベタですね。
色々なお店が、色々な手法でベタベタ処理をされています。
もちろん当社でも行っています。
機械的作業では無く、機能面作業なのであまり大々的に告知していませんが、やれます。
156と147ではスイッチの構造が異なります。147は分解が少し大変です。
スイッチ内部に詰まった汚れや、細かいところのベタベタまで綺麗になりました。
これで安心して窓を開けられます。
じつはこの作業もトレント君の担当です。
従来は、特殊な水を用いて、ブラシなどでセコセコ・ちまちまと施工していて手間と時間を
掛けていたのですが、トレント君なら1分以内に施工を終える事ができます。
非常に心強く、頼もしいトレント君です。
あらゆる箇所をリフレッシュし、車が生まれ変わったような感触は私達にとっても非常に嬉しい事です。
納車日にお客様に喜んで頂ける瞬間の為に、私達もどんな車輌にも全力で取り組みます。
車には、幸せな個体・不幸な個体が存在しているのは事実です。
幸い、当社にご来店頂く車輌は幸せな個体が多く思えます。
年数の経過した車輌はしっかりとメンテナンスを行い、新しい車輌はより良くする為の整備を行う。
そして、そこに共通して言えるのはお客様の愛着・情熱であると思います。
多種多様なご相談。お待ちしています。