数多くリリースされるサスペンションに悩んだ時はご相談を
アバルト595 ツーリズモは、12ヶ月点検と合わせてサスペンションのアップグレードについてご相談を頂きました。
サスペンション関連は、色々な選択肢があるためにユーザさんが悩むのは必然です。
どの様なサスペンションがお客様に合うのかを、それぞれの特性についての説明も交えながらご案内をさせて頂いています。
沢山のアバルトやフィアットのサスペンションを手掛け、様々な製品を乗り比べている事はアドバイスをさせて頂く上でとても重要な事です。
もうひとつ大切なのは、今現在のお客様のお車のコンディションがどうなのか?どの様に感じているのか。
機械的コンディションの把握と、カウンセリングです。
- ほとんどの方が足廻りに求められる条件は共通しています。
*サーキットは走らない
*車高をある程度は下げたい
*嫌な突き上げ感は避けたい
*減衰調整機能はよくわからないから不要
*安心して一般道から高速道路を走行したい
*ちょっとスポーティな走りも楽しみたい
これらのご意見を頂く事が多いです。 - どれもよく分かる内容です。
ひとつ注意書きをするならば「サーキットは走らないから車高調までは不要」という言葉です。
世の中の見解はサーキット=車高調なのですね。これは今も昔も同様です。 - 車高調が付いているからといって、個人で車高調整をする事はほぼ皆無なのですよ。
車高調整機能は、確かに車高を細かく設定することが可能です。
最大の利点は、1年後・2年後・更にその先に見えて来ます。
例えば、ダンパーをオーバーホールしたいと思ったとき、味付けを変えるためにスプリングを変更する事もあり得ます。
その時に車高調整機能(アジャスタ)を備えてなければ、スプリングを変更はほぼ不可能になります。
また、スプリングが馴染み、組付け当初よりも車高が8mmほど下がった。このときにも簡単に補正が可能。 - ご自身では車高はイジらないから「アジャスターは無くても良い」ではないのですね。
様々なニーズに応える為にはアジャスタは必須だとお考えください。 - 今回組み付けを行うのは、先程のニーズを当社なりに形にしたアジャスタブルサスペンションキットです。
しっかりとした減衰力(しっかり=硬いでは無く包容力がある)と、安定感のあるレートのスプリング・そしてスフェリカルアッパまでをセットにしています。
スフェリカルアッパーは、足廻り変更(引き締める味付け)の場合は組付ける事を推奨しています。
ノーマルのマウントは、半浮動式構造の為、余計な動きを発します。そうするとダンパーが良い仕事を行っても、収束にズレが生じます。
フロント側組付け完了!
「ストリートスポーツ」という名のサスペンションキットは、尖りすぎていない事が魅力のサスキットです。
車高調形状の製品にありがちな、伸び側のストロークが短いという事も無く、伸び・縮み共に余裕を持たせた設計です。
今回のアバルトはコンペティツィオーネでは無く、ツーリズモ。標準装着のサスペンションがそれぞれ異なります。
ダンパーとスプリングが異なるのですね。標準車高についてはツーリズモの方がやや高めであります。
フェンダーアーチトップ~ホイールリム下限点にて測定
フロント595mm→565mm
初期馴染みを考慮し、やや高めに設定しています。
馴染みが終えればおそらく 5mm~8mm 程度下がる予定です。
サスペンション変更前の、標準サスペンション装着状態における BOSCH SDL テストによる路面粘着率のグラフ
サスペンション変更後の、SessAストリートスポーツ装着状態における BOSCH SDL テストによる路面粘着率のグラフ
- 変更前は、粘着率がとても低い事がグラフから見てとれます。
粘着率が低いという表現は分かりづらいかもしれません。
粘着率が低いと、速度を上げれば上げる程に路面ギャップを拾った際の、車体浮き上がりを強く感じる為に、ドライバーは怖さを覚えます。
逆に粘着率が高い場合、路面状況に左右されず安定感のある走行性能を実現します。 - 今回の作業後の結果は、当社のサスペンションの割にはリヤが低めに表示されています。
これは、装着しているタイヤの特性が、グラフに現れていると解釈出来ます。
ハイグリップタイヤを装着されていますので、サイドウォール剛性が高く、硬いタイヤですのでこういう結果となります。
同じサスペンションでミシュランパイロットスポーツ4や5の場合、粘着率の高いグラフが表示されます。 - タイヤもサスペンションの構成部品のひとつとして、大切な役割を担っている証拠ですね。
- 良いサスペンション=お客様のニーズに合っているかだと思います。
取り付ける車体の基礎環境を整え、確実な組み付けを出来る事・組付け後のセッティングを熟知している事。これらが整わなければ良いとされる製品を組付けたとしても、良い結果は得られないでしょう。
当社の考えは「製品を売りたい」では無く「満足して頂きたい」です。従って、サスペンション関連については通販向きの製品ではありません。
トータルメンテナンスの一環として、サスペンション整備のご依頼を頂ければと思います。
Written by Hashimoto