アバルトやチンクに美味しいオリジナルサスペンションの新規開発を始めました Part.2
リヤサスペンションのセッティングの追及は、ダンパーのみに留まらずリヤスプリングの作成にまで及びました。かねてから発注していたリヤスプリングが出来上がりました。チンクに用いるリヤスプリングとして、2種類をオリジナル製作します。
自由長250mm レート3キロ
自由長200mm レート4キロ
ちなみに、ビルシュタインB14に付属のスプリングのレートは実測したところ、約1.8キロでした。
こちらのブルーのスプリングですね。
焦点をどこに絞るかで、リヤレートの選択が重要です。乗り心地重視なのか、スポーツ走行~サーキット走行なのか。。何かを求めると、何かが遠のいていくものです。ノーマルは乗り心地重視に全てを設計していますので、楽しく走らせたい場合は不向きという事になります。
今回は、スプリングレートを色々と試し、挙動にどのような変化がでるのか。得られるものと、失うもの。それらを実走行においてテストします。
そのために必要になるのが、リヤのスプリングアジャスタです。
今回は、新規作成したスプリングに合わせて、台座(アジャスタ)も新規作成しました。
車高の補正幅がどうか?バンプコントロールの選択肢は十分にあるか?などをテストします。
台座(ロワシート)は、ビームにボルト固定します。
スプリング上側(アッパーシート)は純正のラバーをそのまま使用します。
新規作成したダンパーとの長さのバランスは非常に良いです。
この後、車高の調整を繰り返し行い、3種のバネを同じ走行条件の中でテストしてきました。
4キロ:全体の乗り味はレートが高い分、硬め。硬いのは当然ですが、タイトに回り込むコーナーの際にリヤの安定感・踏ん張りが効くため、結果的にフロントのグリップが失われず、アクセルを強めに開けてコーナリングする事が可能に。俗に言うアンダーステアが出にくい味付けです。
3キロ:乗り味は硬くも無く、柔らかくも無く。無難な乗り味です。好みとしてはこの3キロが好きです。先ほどと同じコーナーでの踏ん張りもそこそこ頑張ります。コーナーでのステアリング操作をギリギリまで行わず、急なステアリング操作を行うテストでは舵が効くまでに時間を要す印象でした。4キロの場合、急な操作に対しても姿勢を作り易く感じます。ギャップ乗り越えの際の前後のバランスが良く、楽しく走れて良いバランスです。
1.8キロ:乗り心地の良さはダントツです。柔らかいので当然ですが、最もマイルドです。コーナリングの印象は、タイトコーナーで同じ速度で入り、アクセルを開けていくと、ペダルの踏み増しに対してフロント駆動輪が鳴き始め、次第にラインよりも外に逃げていこうとします。そのギリギリを保ちながらのコーナリングは、レースであれば弱みになりますが、限界の低さ=使いこなせてる感は上がります。
俗に言うアンダーステア傾向にある特性です。
リヤレートを上げる事で、軸となるアシが前から後ろに移行していくのも感じました。
軸足の移り変わり:前が軸⇒中間よりも後ろ寄り⇒後ろが軸
レート: 1.8キロ 3キロ 4キロ
インプレッションからも分かる様に、リヤのレートだけでダンパー据え置きでここまで性格が変化します。
乗り味の好みは千差万別ですので、これからサスペンションを変更しようとお考えの方、仕様変更をしてみたい方、まずはご相談をいただければ適切なアドバイスをさせて頂きます。
ちなみに、これらのテストを行うのにほぼ1日を費やしています。検証と言う作業は簡単ではありません。
お客様の車に、ノウハウを満タンにした状態で作業に望む為に検証は大切です。
これからもサスペンションの探求は続きます。
Written by Hashimoto