アバルト500のエンジン修理完了しました

長期的にお預かりしていた車輌がようやくお客様の元へ納車できました。

思い返せば昨年の9月頃からの超長期入院でしたので、長かったですね。
当社へご来店された方でも、眼にされているかたが多かったのではないでしょうか。

私自身も、こんなにも早くアバルト500のエンジンをオーバーホールする事になるとは思っていませんでした。
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この車、エンジンを降ろしてくるのにはかなりの分解が必要なのですね。
フロント廻りはほぼ全部取り外します。

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エンジンスタンドへ固定し、各部の分解を進めていきます。
ピストンは全てがダメージを受けています。

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ヘッド側も全損といった状況...
バルブがピストントップの形状に準じて変形しています。

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このシリンダヘッドは、2階建て構造のヘッドですので、バルブの納まる部屋とリフターの納まる部屋が
それぞれ独立しています。
よって、リフター側を分離するには、上記の様なプレートを用いて剥離しなければ、リフターが脱落します。

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抜き取ったバルブが、コレです。ぐにゃ~..ですね。
写真がありませんが、バルブの上にセットされるリフターもダメージを受け、破壊されています。

リフターと、バルブは全数を新品に交換・バルブガイドも外輪加工とセット長を合わせて組み替え。
シリンダヘッド側、バルブシートは形状修正とシートカットを行い修理。
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各バルブのすり合わせ加工を行い、組付け。
バルブの機密性をチェックするための単体保持試験も行ないます。

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このエンジンのコンロッド大端部は、クラッキングコンロッドと呼ばれる手法が採用されていました。
通常のこの部分は、綺麗な断面になっていて、ノックピンにより位置決めがされる。というのが従来の
手法であるのに対して、クラッキングとは破断面にすることで断面が凸凹状になり、応力分散の効果が望める他に
ノックピンを使用せずとも確実な位置決めが可能である事から、大端部のコンパクト化、すなわち軽量化が実現するのです。

最近はエンジン本体を分解する機会が減っているので、数年前から使われている技術ですが目の当たりにするのは
今回が初めてでした。

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使用するピストンは、オーバーサイズでは無く、スタンダードサイズの中で最も外形の大きい物をチョイス。
製造時にでる個体差を、3つにクラス分けされている為、微妙なサイズ変更が可能。
ボーリングという程の作業を必要とせず、シリンダ側とのクリアランス調整が可能な為、手段としてはベストと判断。
(既存のピストンが全てAとBであった為、Cで統一できたという事)

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せっかくの機会なので、スペシャルパーツも組み込みました!
ARUGOS ライトクラッチキット☆ジャパンメイドな強化・軽量クラッチ&フライホイールKITですね。
重量は驚くほど軽くなります。総重量はなんと8.6キロです。
純正品を測定していないので、比較はできません。
言える事は、純正は腰に気を使いながら持ち上げますが、こちらはその必要がありません。
純正品を持ち上げた後に、こちらを持ち上げると勢い余って体が後ろへ後退します。。。
ただし、フライホイールにも、クラッチディスクにもダンパー機構が備わっていませんので、
乗り慣れるには少しの慣れが必要です。

箇条書きにすると、すぐに完了しそうな作業内容ですが、実際は部品が無かったり、機械加工の時間が
必要であったりと、手間と時間は凄いことになります。
エンジンコンプリートを交換する事を思えば、今回の作業内容が金額的には抑える事ができました。
そもそも、エンジンコンプリートもすぐには入手できない状況でしたが。

普段の作業とは、時間の流れの異なる内容ですが、こんな内容も興味深いレポートだったのではないでしょうか?

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