クラッチ作動力増大はデュアロジックの黒幕


クラッチメカニズムの作動力についてのお話し。

クラッチディスクが消耗すれば、クラッチを操作する際に必要な力が増大します。
これは、マニュアルミッション車にお乗りの方ならばご理解頂けるかと思います。
クラッチペダルを踏み込む際に「重さ」として感じとる事ができますからね。

フィアット500に採用されているデュアロジックシステムの場合、この操作力の増大が弊害になる事は多いです。
デュアロジックシステムは、クラッチの操作力を常にモニタリングしています。

この実測値が、基準値を超えるとクラッチ操作が不可能と判断し、その結果として変速に制限をかけます。

操作力は、クラッチコントロールバルブの消費電力を計測しながら、重いのか・軽いのかを判断基準としています。
消費電力が増えればクラッチは重たいという流れですね。

こちらは、新しいクラッチメカニズムの操作力を荷重値として計測したもの。
ダイヤフラムスプリングをプレスで押し込みながら、クラッチが切れるまでの荷重値は74キロを計測しています。

そのままダイヤフラムを押し続けると、プレッシャプレートとクラッチディスクの間に隙間が生じます。
この状態がクラッチが切れた(遮断された)状態です。
その際の荷重値は96キロ。

続いてのテストは、作動不良を起こしていたフィアット500より取り外したクラッチメカニズムです。
こちらを先程と同条件でのテストを行なうと 156キロと計測しました。
これはクラッチが切れるまでの間に移り変わる荷重値の最も大きな数値です。

クラッチが切れる際には、荷重値は119キロまで下がりました。

クラッチディスクの消耗が進むとクラッチの操作力は増大します。
デュアロジックのコントロールユニットは、この操作力の増大を見逃さず、クラッチ操作の開始時(クラッチが切れる前段階)で消費電力が規定よりも高い数値の場合は
直ぐさま異常として認識をする為にクラッチ操作を停止します。
このため、クラッチ消耗が進んだ場合はギヤ変速はおろか、キャリブレーションの実行も不可能となります。


デュアロジックシステムにとって、クラッチを常に正常な状態に保つ事がとても大切であると言えますね。
過酷な環境下での使用を続ける事で、アクチュエータへの負担が増えるという嬉しくない話も漏れなくついてきます。

適正なクラッチ交換の時期を知るためには、正確な診断が必要不可欠です。
クセが多く気難しい点を理解し、上手に永く付き合うことの出来る整備をご提案しています。
Written by Hashimoto

関連記事