可変バルブタイミング機構について考える
VVT制御とデューティ比の関係


「可変バルブタイミング機構」
様々な車に装着されている、エンジンの燃焼効率・出力・トルク 様々な要素と密接な関係のある機構です。

エンジン内部の部品には無限の組み合わせがあり、エンジン製作者の思いが込められています。
内部パーツの構成やECUプログラム次第で出力側に振ったり、燃費側に振ったり、様々です。
現代は殆どが、燃費を重視した構成になっているのは間違いありません。

今回検証を行うのは、ルーテシア3RS 2.0L 自然吸気 200馬力 ルノースポール最後のF4系ユニットを搭載しています。
F4とは、クリオ2RSより採用されているエンジンでして当初は172馬力だったものが、改良を各部に加えて最終的に200馬力まで出力を高めた、いわばルノースポールの名機です。

このF4エンジンは、非常にマージンを多く残した設計でして、クリオ2をフルコンにし、セッティングを煮詰めると
メカニカルチューンを行わずとも220馬力まで向上すると言うことも実証済です。
172馬力が220馬力 。。とんでもない出力型エンジンです。

今回は、あまり突っ込んで検証した事の無いことを実証しようと思います。
F4エンジンに限らず、K4M(カングーやメガーヌの1.6DOHC)メガーヌRSにもVVT機構が備わります。
VVT機構とは、可変バルブタイミング機構の事です。
エンジン負荷・アクセル開度・エンジン回転に合せてバルブタイミングを可変させ、吸入空気の体積効率に働きかける機構です。

カムシャフトを進角させたり、遅角させたりする機構ですね。

カムの開き初めを早くするのか
カムの閉じ終わりを遅くするのか
これにより、その時最もエンジン出力を出せるベストポイントが有ると言う事です。

チューニングパーツに「ハイカム」という物があります。
これは、バルブリフト量を大きくし、更には開き始めを早くし、閉じ終わりを遅くする。そんな特性を持っています。
ただし、常時その様な特性のパーツを組むと、燃費悪化に響いたり、排出ガスに影響が出たり、トルク低下やアイドリングの不安定さ。
色々と犠牲も伴います。
その代わりに中回転から高回転にむけてのパワーバンドの立ち上がりは鋭くなります。
トルクと出力をどんどん高回転側に寄せていくパーツがハイカムです。

純正の特性はあくまで、万人受けし、乗りやすいことが大切ですのでマイルドな仕様の物が装着されています。

それを使いながら、美味しい所取りをするのがVVT機構と言う事になります。

自身もどのような制御で作動するのかが知りたかったので検証することに。
必要となる設備は、シャーシダイナモ・ECU診断機・オシロスコープです。

VVT機構をコントロールするのは、エンジン上部に装着される油圧アクチュエータです。
この部分に、ECUからの信号によるデューティ制御でコントロールされます。

通常通り、5速ギヤで1100回転あたりからアクセルを全開にし、測定しました。

採取データがこちら。

VVT最大進角は2000回転から5500回転まで。
5500回転以降は、中間域に保持され、レブリミット以降しばらくはその状態を維持します。
最大トルク発生に最も進角されているものと思われます。

予想とは異なる結果でした。
当初の予想では、ある一定のVVT作動タイミングを越えると、その後は最大を維持したままであると思っていたのですが
回転数により最適な所を維持するように設計されています。

こちらは測定時の動画です。

こちらは、オシロスコープによるデューティ比を表示した物です。

もうひとつ気になったのが、スロットル開度です。

ダイナモ測定時のグラフなのですが、室内では1000回転からアクセルはベタ踏みにもかかわらず、スロットルバルブが
本当の全開域に達するのは、最高回転付近に達してからでした。

いかがでしょうか。ものすごく面白いデータ採りができました。
純正ECUの制御は、とても賢いですね。

そして、今回VVTの作動に問題があったのでそこも修正を加えています。

黒色の低いラインは、VVTが正常作動していない状態
黒の高いラインは水温が少し低い状態でVVTが正常作動している状態
赤いラインは水温が最適な状態での、VVT作動が正しい状態
VVTの効果がものすごく大きいのがよく分かります。
全回転域に渡り、変化が出てくるのですね。

温度によるレブリミットの違いについては過去に取り上げています。

これでルーテシア3RSのエンジン特性についてひとつ賢くなりました。
エンジンの調子がイマイチ?っていう様なトラブルを抱えた車に対してもより一層適切な判断が出来そうです。

Written by Hashimoto

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