エンジン圧縮漏れ あからさまな例
エンジン本体にダメージを受けている場合、乗って分かる程の症例と、殆んど分からない症例があります。
今回の車輌は、乗って分かるダメージを受けていました。
正確には、始めは分からなかったけども、分かるようになってしまったが正しいのかも?
オイル交換でご来店いただき、ラジエタキャップの不良が見つかった為に交換しました。
悲劇はここからです。
オイル交換を終え、お客様がお帰りの道中で、なんかエンジンが変!とのご連絡を
いただきました。
戻ってきて、アイドリグのエンジン音を聞くと...?
「ドコドコドコ」と1気筒が働いていない様なサウンドが。
点火系統のトラブルかな?とも疑いましたが、ラジエタ内部の水の状況がおかしい!
時折、ぶくぶくと気泡が混じってきます。
ある程度の予測をたて、診断を開始します。
FIAT PANDA 1100です。
ボーイズレーサ丸出し!のごとく、オバフェンが飛び出ています!
いきなりですが、こんな測定を行なっています。
ラジエタ上部に浮遊する空気を、排気ガステスタで吸い込み、測定開始。
すると、どうでしょう。
あってはいけない結果がここに確認できました。
HCの値を見ると、773ppm!
HC=hydrocarbons =炭化水素ですから、未燃焼ガスという事になります。
ラジエータからHCが検出されると言うことは...?
エンジンのヘッドガスケットが吹き抜け、ウォータラインとつながってしまった。という事になります。
不具合のあったラジエタキャップでは気密が保たれていない為、ギリギリのところで持ち堪えていた
ガスケットが、気密保持をするキャップに交換した途端に、一気に弱い箇所へと力が逃げる様に
なったのですね。
別の方法でも点検してみましょう。
先ほどは、電気を使ってのチェックでしたが、次は機械的なチェック方法です。
コンプレッションロステスターです。
ロステストとは、測定したいシリンダを圧縮上死点に設定し、そのシリンダへ圧縮空気を導入し
気密が何%漏れているのか(ロスするのか)また、聴診器などを用いる事でエアー漏れのある箇所を
直接チェックする為の方法です。
今回は1番シリンダに対してロステストを行ないました。
すると、テスト開始と同時になんと!ラジエタから大量の冷却水が溢れ出しました。
何が起きているかはすぐに分かりますね。
ちなみに、こちらのテストではこれまで程の大きな結果は得られませんでした。
BOSCH FSAテスタの機能のひとつ、コンプレッションテストです。
電圧・電流(セルモターの電流値)から、4つのシリンダそれぞれの平均電流値を算出し
それをコンプレッション(圧縮値)に置き換え、バーグラフとして出力するテストです。
結果からは、確かに1つのシリンダのみ、他と比較すると圧縮が低い事になっていますが
これまでほどの結果では無いですね。
バルブの密閉不良の様なトラブルの際は、顕著に結果が現れるのですが、不思議と露にはなりませんでした。
全てのテストが一長一短ですが、それらのテスタを上手く活用することで、的確な判断が出来るという事です。
作業の方向性が決まりましたので、ヘッドを降ろし、各部の分解に着手しています。
今回は、ガスケト交換とシリンダヘッドのオーバーホールを行います。
外したバルブの汚い事!
でも、本当は腰下側(エンジンブロック)側もリフレッシュしたいところですけどね。